第134回 よんでみ亭!!
ふるさとのお社(22)
~諏訪神社③~
・・・さらに注目したいのは、この(和邇ワニ氏)一族の
なかに、柿本人麻呂のような人物がいることである。しか
も人麻呂の歌を通してみるとその世界観は『古事記』のそ
れと完全に一致する。だからと言ってその(古事記の)作者を
人麻呂のような特定の個人に擬するまでに煮詰めることは
できないけれども、その一族の誰かであるとみてよかろう。
(川副武胤)
今年の冬は近年になく寒いですね~。みなさんお元気ですか~?
正月もあっという間に終わり2月逃げ月、まもなく春3月を迎えますね。
冬眠生活にピリオドを打って街に出て行きましょう。新幹線も開業しますし
きっとまた素敵な出会いが待っていると思います。
・・・ってな広告のコピーみなたいなセリフはこのくらいにして、昨年の
続きを―。
スサノヲの治める根の堅州の国に逃れた大穴牟遅(オオナムヂ)には新た
な試練が待っておりました。
と申しましても、これから記しますオオナムヂの冒険は古事記のみに書かれ
た神話であり、日本書紀には記述がありません。
といいますのもこのお話はヤマトが日本を制覇する以前の先住の神々が統合されたと思われる神の物語でありオオナムヂは本来の名が大国主というくらいの大王(だいおう)であったのですが、日本正史としての日本書紀はこの神話に続く国譲りは詳しく記しておりますけれども大国主の素状に関してはスサノヲの子とだけあるのは、古事記にあるがごとくロードムーヴィーのヒーローのように大国主を描いたのではヤマトが大国主の治めていた中つ国を禅譲されたのではなく簒奪したと受け取られかねないのを恐れたためと思われますが、いかがでしょう。
ともあれ本編に入ります。
さてスサノヲの元を訪れたオオナムヂがスサノヲの娘須勢理毘賣(スセリ ヒメ)と出会った途端二人は恋に落ちたのでした。目合(まぐあひ)して相婚(あ)ひたまひ (たがいに目配せして心を通じた。・・あらまここから来たのね)
してスセリヒメが父スサノヲに申し上げることには「甚(いと)麗しき神来ましつ」(ちょ~素敵な神がいらっしゃったわ)
大神出でて見るに「こは葦原色許男(しこを)というぞ」(強そうな色男ではないか)とてオオナムヂを呼び入れ蛇の部屋に招じ入れたのでした。
ここにスセリヒメ蛇除けの領巾(ひれ=スカーフ)をオオナムヂに授け安心して眠れるようにします。
次の日にはムカデ・蜂の部屋で寝かせますがヒメは同じように領巾を授けましたのでオオナムヂは翌朝安らけく部屋から出てこれたのでした。
翌日、大神は草原に鏑矢を射入れオオナムヂに探しに行くよう申し渡しまし た。オオナムヂが草原に入るや大神は火を放ちます。八方を火に囲まれ途方に暮れているとネズミが来て言うことにァ「内はほらほら、外はすぶすぶ」(中は空洞、出口はすぼんだ・・洞穴があるよ)
オオナムヂその穴に入り火が燃え過ぎるのを待ち焼け跡に出てみると件のネズミ例の鏑矢を咥えて来ります。
その頃スセリヒメは父の酷い為さり様に泣き崩れておりました。大神は今度は如何だろうと思いその野に出で立ったところオオナムヂが歩み来たり大神に鏑矢を奉ったのでした。
そこで大神はオオナムヂを率い大室(大きな部屋)に入ると自分の頭の虱を取るように申し付けます。が、大神の大きな頭にいたのは無数のムカデだったのです。この時スセリヒメはオオナムヂに椋の実と赤土(ハニ)を渡し噛み潰すようにと囁きます。
オオナムヂが口を真っ赤にしているのを見てムカデを食い破って吐き出したと勘違いした大神「愛い奴じゃ!」とオオナムヂを褒めたあと高鼾で寝入ってしまいました。
大神スサノヲが眠っている間にオオナムヂは大神の髪をその室の垂木に結わえ付け室の出口に500人かかっても動かせないほどの巨石で蓋をして、スセリヒメを背負い大神の生大刀・生弓矢(生き生きとしてエネルギー溢れる刀弓矢)と天の詔琴(のりこと)を抱えて逃げ出しますが、途中天の詔琴が樹に触れ地面が揺れるほど大きな音を出しましたので大神は目を覚まします。
驚いて室を引き倒しますけれども結わえ付けられた髪を解くのに手間取っている間に二人は遠くまで逃げることができました。
よって大神ここに黄泉比良坂(よもつひらさか)追い至り、遥かに望み大穴牟遅
(オオナムヂ)
神に呼ばいて謂ひしく、
「その汝が持てる生大刀・生弓矢をもちて汝が庶兄弟(ままあにおと)をば、坂の御尾に追い伏せ、また河の瀬に追ひ払ひて、おれ(お前)大國主神となり、また宇都志國玉神となりて、その我が女(むすめ)須勢理毘賣を嫡妻(むかひめ)として、宇迦(うか)の山の山本に、底つ石根(いわね)に宮柱ふとしり、高天の原に氷椽(ひぎ)たかしりて居れ。この奴(やっこ)。」
つまりは「私が持っていた武器で大勢の神を追い払い、お前が中つ国の大王となりその美しい国の守護神となって、我が娘を娶り、宇迦の山の麓に地底の岩に柱を太く掘りたて天空に垂木を高く上げて宮殿を作りそこへ居れ!こやつめ!!」
こうしてスサノヲから受け継いだ軍事的権威の象徴である生大刀・生弓矢と祭祀的なそれの天の詔琴を以って、多くの神々を排除して初めて国を作ったのでした。
このあと付け足しのように、前々回御紹介した『八十神が妻乞いして私はオオナムヂがいいわとて総スカンを喰らわせた』八上比賣(ヤガミヒメ)のことが記されます。
オオナムヂが八十神の嫉妬を避けるため根の堅州国に逃げる前に操を捧げたのですが(いつの間に?)オオナムヂが戻ったというので会いに来ます。が、スサノヲの娘スセリヒメを嫡妻としたと聞き畏んで、オオナムヂとの間にできた子を木の俣に刺し挟んで引き返したということです。
ヤガミヒメのなんという潔さなんでしょ!
またウサギの話から始めてキチンと“落ち”を記す古事記作者の律義さよ!
それにしてもオオナムヂの別名が日本書記では葦原“色許男”(しこを)ではなく“醜男”とあり、あまりいい字は使われておりません。とりあえずアマテラスにとって弟スサノヲの子でありますから甥に当たりますが、どうもスサノヲの名自体荒ぶるとかスサむとかこちらも比較的負のイメージでありますのでヤマトから見て両神とも異国の神(蕃神)ではなかったか・・ということです。そうして文化的にも宗教的にも征服しつつ取り込んで行ったのではなかったか。
いまいちオオナムヂ=大国主の性格がはっきり書かれておりませんが、こうして改めて古事記を読んで行くと非常に面白いですね。
ということでこの続きはまた次回に。
亭主敬白