「遠い日 帰らぬ昔」

・・ケビンコスナーを支持する妻と、二人の子供と共に・・・

島田 卓

 あの北校舎であらためて、若しくははじめて出会った我々。

「なあ、岸田。僕らのクラスは、同じ中学出身が半数以上いたのではなかったか?」

そして、江口がいて言葉を交わすようになり、まさかその時はこうまで長く決定的な存在として、
あり続けていく関わりを持つようになろうとは、勿論予想だにできなかった。

岸田よ!Peter,PaulMaryそのものを歌い、ある時はかの、郷ひろみを、野口五郎をそして
キャンディーズを歌い、また江口を入れた三人組のテーマソングThis Boyを歌う。そこにはなにがあるのだろうか?

江口よ!おまえのお抱えの理髪師でのあった僕だが、僕らの期したヘアスタイルはあまり、芳しい評価を得ることができなかった。口惜しいのだよ、今でも。随分と「さすらい」続けてきたおまえは、それをどう総括して現存するのか?

福井よ!結婚してからの紆余曲折、波瀾万丈をどう乗り越え、

遂には「炭火の熾し方」まで至ったのか?

矢野よ!Country Roadを放吟しながら何度も酔いつぶれた。

酔いの向こうにある、おまえの穏やかな笑顔はどこから来るのか?

成冨よ! いついかなる時・場所・話題にあっても酔いと共に眠りこけるその時、おまえはどんな夢を見ているのか?

野瀬よ! 幼いながらも政治的なるものに、日々に異なる立場から関わろうとしていった。酔って尋ねた「屈託」については酔眼朦朧となっていくなか、言葉も朦朧・・。

 

 

小学4年の娘が、母親の「荒井由美」を聴きはじめた。初めて自分でCDを購い、自分の部屋で聴いている。
その歌がかすかに僕の耳にも聞こえてくる時、「荒井由美」なぞ聴いたこともないのに急激に、
遠い日帰らぬ昔に引き戻されている。

木村清吾のテノールは、全身を走り抜けていった。音楽室の窓を突き破り、
運動場の真ん中まで響きわたって来る肉声は、僕の「音楽」を底から覆すものだった。

それでも、ほんの先日「先生、三度五度と声をかぶせると別の音がきこえてくることがありますが、
あれは何ですか?」などと尋ねる始末。(実に20年後にだよ)

「あれはね、きみ、倍音です。」「ハァ、そうなんですか・・」(よく解っていない)

音楽の時間にある女子が課題曲「マルタ」を歌っていた時、クラスの男は皆シンとなって聴いていた。
僕は忘れられないなあ。

高校に入学して4月下旬ともなると、学科への集中も完全になくなっており、初夏の訪れを思わせる
暑さを感じるばかり。教室の窓からプールが見える。

(よし、暑いから水泳にしよう!)

こうして僕は、あっさりと音楽への道を変更したのだった。水泳の練習の合間にテニスコートを見ると
クラスの子が見えた。彼女は今も何も気づいてないだろうな・・

卒業し、怒涛のような京都での五年間が過ぎ去り・・・・

・・・・・・・人を介して知り合った女性と結婚し、十数年が経った。

中一の息子、小四の娘、静かな住宅街の住まい、ドライブ、映画、食事、海、風、四人の会話、
淹れたてのコーヒーの香り・・。

 これらの日々もいつか、帰らぬ日 遠い昔に・・・・

1994年2月

注)島田とのエピソードは数知れず。影響も数知れず。本の虫のくせに、文は読解しづらいが人間は、
文よりもっと解りづらい。なのに、二人で酒やコーヒーを飲んだ時間は一番長い筈だ。
ホモとは違う。映画の「ブルースブラザーズ」的な関係か?